令和5年2月号
8月のイラスト
 

  給与の支払いは労基法で現金払いが原則となっていますが、労働者の同意があれば銀行口座や証券総合口座への振り込みも認められています。4月からは新たな振込先として資金移動業によるデジタルマネーが加わります。

1.指定資金移動業者に求められる要件
資金移動業のデジタルマネー口座は現金の入出金ができます。銀行口座よりも送金スピードが早く、手数料が安いという利点があります。そもそも、資金移動業者の口座は貯蓄よりも決済や送金に利用することを目的とし、万が一の際は、預金保険制度の適用を受ける預貯金口座と異なり、資金決済法上の資産保全の方法で利用者保護が図られていますが、還付手続きは財務局によるため時間がかかるというデメリットがあります。それらを勘案し給与振込を受ける指定資金移動業者には以下の要件等を課し安全を確保しました。

(1)口座残高が100万円を超えた場合超過分をその日のうちに労働者があらかじめ指定した預貯金口座等に送金できる仕組みが必要

(2) 指定資金移動業者が破綻したとき全額返済に向け保証機関が弁済する保証委託契約を締結すること

(3) 不正出金があった場合指定資金移動業者の利用規約等により補償できる仕組みが必要

(4) 毎月1回は、労働者に手数料負担なく払い出しができる仕組みが必要

2.会社としての準備
厚労相による指定資金移動業者の申請受付は4月からとなるため、早くても今年の後半にならなければ会社がデジタルマネー払いを導入することはできません。それまでにできる会社の準備事項は次のようになります。

(1) 長所・短所を洗出し給与のデジタルマネー払いを導入するか否かの方針決定
考えられる長所送金スピードアップ振込手数料の削減月2回以上の給与支払いが可能に。労働者が銀行口座からデジタルマネー口座に送金する手間がなくなり、求職者へのアピールにもなる。
考えられる短所:会社の給与支払いの手間の増加。労働者のデジタルマネーに対する理解が低い場合は会社への不信感になる可能性あり。

(2) (1)で導入が決定し、実際に導入のタイミングになれば、支払方法その他必要事項について賃金規程の変更

(3) 必要に応じ指定資金移動業者の選定を行い、当該業者の指定要件(滞留規制、破綻時の保証、不正出金の補償、換金性、アカウントの有効期限)について労働者に説明し、同意を得、口座情報を収集

(4)希望者に給与をデジタルマネーで支払う